質量分析を応用した次世代オミクス研究

質量分析技術を応用した疾患メタボロミクス研究

 生体内では酵素反応が単独で起こることはほどんどなく、多段階の連続反応に組織化されていています(解糖系など)。経路においては1つの反応の生成物は次の反応の基質となります。さまざまな異なる経路が交差し、統合された目的のある化学反応ネットワークを形成しています。これらをまとめて代謝(metabolism)と呼びます。

 生物もそれを構成する細胞も代謝過程を統合して、内因性や外因性のさまざまな要因に応答してこれを調節する必要があります(ホメオスタシス)。ホメオスタシス(homeostasis)の達成および維持には関連する酵素反応がバランスと統制のとれた速度で進行し、かつ内部および外部の環境の変化に適切に応答することが必要です。つまり、ホメオスタシスは代謝調節によって維持されており、これが破綻することに伴い、ある刺激に対して不適切な応答を示すことを病気と定義することができます。したがって、病気を分子レベルで理解するためには、代謝を深く知ることが大切です。本研究室では、疫学研究に応用可能な疾患メタボロミクス研究に取り組んでいます。

脂質:その量と質によって制御される生命機構の解明

 脂質は生体内において(1)細胞の構成成分となる(2)エネルギー源となる(3)シグナル分子となる、という重要な生命機構を担っています。特に我々は、脂質から産生されるシグナル分子、生理活性脂質メディエーターに着目しています。脂質メディエーターには、炎症に関わる様々な物質が近年発見されつつあり、病態における新たなキープレイヤーとして注目を集めています。予防医学という観点からも、脂質は食事内容によってその量と質が大きく変化することから、我が国における肥満、糖尿病、動脈硬化性疾患、認知症等の疾患増加に関わっていると考えられます。脂質は研究対象として取り扱うことが難しいものですが、質量分析総合センターとの共同研究により、さまざまな生命機構・疾患に関連する脂質の量と質の役割について、研究を進めています。